知って得する特殊清掃

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政策効果で景気が上向けば、資産価格も上昇して、不良債権も優良債権に転換するかもしれないと、密かに期待していたのだろう。 とんでもない経営判断の誤りだった。
確かに第1期に総額60兆円もの景気対策を打ったことで、実物経済の需給ギャップを埋めることはできた。 バブル崩壊によって生じたキャピタルロスは株式と不動産の合計で千兆円規模という、とてつもない金額にのぼる。
60兆円という景気対策の金額とは桁が違うのである。 だから、この資産デフレという構造問題には民間企業、金融機関が痛みの伴う不良資産、不良債権の償却を地道に進めないことには、いつまで経っても事態は変わらない。
だから、95、96年のマクロの景気回復といっても手放しで喜Bールク代物ではなく、民間の悪化したバランスシートは依然として重い負担として経営を圧迫していた。 比喩的に言えば、内臓疾患(資産デフレ)で長期療養中の患者(日本経済)が栄養補給(景気対策)により、やっとベッドから起き上がって散歩できるまでに回復したものの、内臓疾患については改善の兆しが見られなかった。
つまり、患者の体力は栄養補給を取りやめても自力で栄養摂取できる、というまでには回復していなかったのである。 元気そうに散歩している患者の姿を見て、栄養補給を全て取りやめる決定をした主治医(H本内閣)の誤診が、その後、患者を危篤状態(金融危機)に追い込むのであった。
H本内閣が掲げた6つの改革とは行政改革、財政改革、経済構造改革、金融改革、社会福祉制度改革、教育改革である。 このうち財政改革の観点から景気対策で膨れ上がった財政赤字を2003年までに対GDP比で3%以下に削除することを閣議決定している。
96年の経済パフォーマンスの改善に勇気づけられて、97年度に9兆円にものぼる財政引き締め政策を断行した。 4月からの消費税率の3%から5%への引き上げ、特別減税の廃止、9月からの医療費等の負担増加である。
消費マインドを決定的に冷やしてしまった。 せっかく資本ストック調整が完了して上昇局面にあった設備投資の腰を折り、バブル崩壊直後にも匹敵する新たな資本ストック調整がスタートすることになる。

実は、消費税が導入される半年ほど前にワシントンで米政府当局者とH本内閣の経済政策について意見を交す機会があったが、「バランスシート問題が解決していない段階での財政引き締めはクレージーだ」と語っていたのが印象的だった。 まさしく97年4月を境に景気は急降下していくわけだが、当時のH本内閣の経済閣僚は景気の下降は一時的な反動にすぎず、景気回復トレントは崩れていないとの見方に固執し、景気が急降下しているという現実を受け入れようとはしなかった。
H本首相自身も財政改革という看板をおいそれと下ろすわけにいかず、また政策転換を行えば、4月の消費税率引き上げ等の失敗を認めることにもなるので、Kーターなに政策転換を拒否し続けた。 マクロの景気下降につれて、夏場に2万円をつけていたN経平均株価が、わずか数カ月で再び1万5千円まで急落してしまう。
このような資産価格の下落は金融機関のバランスシートを一段と悪化させ、限界的な金融機関を破たんに追い込むこととなる。 97年11月のH拓、Y一、S洋の倒産につながっていく。
こうやって振り返ると、資産デフレと財政政策に関する正しい理解を欠いていたために、H本内閣は致命的な失敗を犯してしまったと言える。 資産デフレにより生じたバランスシートの悪化を是正するには金融機関、及び企業みずからが痛みを伴う不良債権、不良資産の償却を進めることが第1であり、財政政策の役割は償却期間中にマクロ経済に及ぶデフレ効果をできる限り軽減することである。
財政がリードしても資産デフレの解決にはつながらない。 財政が出なければ経済はスパイラルに下降していきかねないということを、認識すべきだったのである。
H本内閣がH拓、Y一という大手金融機関の倒産を黙認した結果、日本経済が金融恐慌の様相を呈してきたために、H本首相は1997年12月、突然に特別減税の復活を決断した。 さらには98年4月に事業規模で16兆6500億円にのぼる総合経済対策を決定した。

特別減税等で4兆6000億円、公共投資で7兆7千億円と、併せて真水が12兆3千億円という大型景気対策であった。 財政改革という看板をおろさないで、なし崩し的に政策転換に踏み切ったわけであるが、時すでに遅い。
7月の3議院選挙でJ民党は大敗し、H本首相は辞任に追い込まれる結果となった。 政治、経済の両面で混迷が深まったこの時期にH本内閣に代わって登場したのがO渕内閣である。
O渕内閣に突きつけられた課題は金融恐慌を回避するスキームの構築と景気底割れ防止対策の2つであった。 金融再生に関しては与野党妥協で金融安定化関連9法案を10月に成立させた。
この金融安定化策の実行のために60兆円を用意し、破たん前の銀行には公的資本の注入により、資本不足を補うことでクレジットクランチを緩和させ、大手の破たん銀行に対しては特別公的管理という形をとって営業を継続させることでシステミックーリスク、危機の連鎖を未然に防ぐ体制を整えた。 これにより金融恐慌が起こる確率は極めて小さくなったと言える。
パニック状態に陥っていた景気マインドを改善するのに大きな効果があったのは言うまでもない。 次にO渕内閣は前H本内閣の看板である財政改革を凍結して、積極財政に向けて大きく舵を切ることになる。
同じ98年11月に緊急経済対策を決定したが、事業規模は23兆9000億円、減税は所得.住民税で4兆円、法人税で2兆円と合計6兆円に達し、この他にも商品券で7千億円が追加された。 さらに、公共投資は8兆一千億円に及び、真水は合計で14兆8千億円となった。
真水以外でも貸し渋り対策で5兆9000億円を用意するなどまさに背水の陣の趣があった。 現実に、この景気対策の結果、公共事業着工額は99年1月より急拡大し、しかも98年度補正予算と99年度予算を併せた、いわゆる15ヵ月予算の工夫がこらされたために、年度代わりの99年4月も引き続き高い伸びを維持することになった。
99年1〜3月期の実質経済成長率は前期比年率8.1%と6期ぶりにプラス成長を記録した。 これで安心するわけにはいかない。
遅すぎるきらいはあるが、民間金融機関、企業がいよいよ本格的にバランスシートの改善に乗り出してきた。 金融機関については早期是正措置の観点から自己資本の増強を一段と進めなければならない立場にある。
しかも、BIS(K際決済銀行)規制の大幅な見直しが進められており、新しい計算方式が認められれば問題債権を抱えた銀行の自己資本比率はこれまでより小さく出ることになる。 そうなると、金融機関は再び貸し出し回収、貸し渋りに動かざるを得なくなるだろう。

だから、景気回復を1日も早く確実なものにして、できうる限り問題債権を優良債権に転換する必要性がある。 また、一般企業はいわゆる過剰3兄弟といわれる過剰債務、過剰設備、過剰雇用の削減を本格化させている。
不況でも利益の出る企業体質への転換という意味で、リストラには景気回復の基盤を強化する役割が期待されているが、短期的には景気を押し下げるデフレ効果が懸念材料である。

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